諫早湾干拓

[ イサハヤワンカンタク ]

解説

有明海の西側に位置する長崎県諫早湾の湾奥部を潮受堤防で閉め切り、その内部に調整池と干拓地を造成する、いわゆる複式干拓事業。洪水・高潮などに対する防災機能の強化と農地の造成を目的として農林水産省が事業を進めている。
事業の必要性に対する疑問と、干潟に生息するムツゴロウや渡来するシギ・チドリ類やカモ類等の自然環境に対する影響の懸念から、地元の自然保護団体等が反対運動を展開していたが、1997年に潮受堤防が完成し、湾奥部の閉め切りが行われた。
その後、有明海のノリ養殖に色落ち被害が発生したこと等もあり、干拓事業が有明海の環境に与えた影響を巡って様々な議論が起ってきた。このため、農林水産省は試験的に水門を開いて環境影響を把握するための調査(短期開門調査)を行ったが、湾奥部の閉め切りが有明海の環境にどの程度の影響を与えているかを明らかにするまでには至らなかった。中・長期にわたる開門調査の是非が検討されたが、中・長期の開門調査を行っても干拓事業が有明海の環境に与えた影響の大きさを明らかにすることは困難との見通しが示されたこと、また、中・長期の開門は新たな環境影響を生み出す恐れが強いとの見解が示されたことから中・長期の開門調査は実施しないこととされた(2004年5月)。
しかしながら、本件については工事差止訴訟が出されていることなどもあり、大規模な公共工事と環境保全のあり方を巡って、今後ともその成行きが注目されている。

詳細解説

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