静脈産業
[ ジョウミャクサンギョウ ]
自然から採取した資源を加工して有用な財を生産する諸産業を、動物の循環系になぞらえて動脈産業というのに対して、これらの産業が排出した不要物や使い捨てられた製品を集めて、それを社会や自然の物質循環過程に再投入するための事業を行っている産業を、静脈産業と呼んでいる。
工業社会には、廃棄物の処理処分にかかわる技術インフラの整備という側面があり、その分野では、中間処理過程が複雑化し高度化するにしたがって、動脈産業と静脈産業とは、資本と技術の両面で一体化を進めて来ざるをえなかった。他方、リサイクル資源の回収や廃棄物の処理・処分サービスに直接たずさわる領域では、依然として資本装備率が低いうえにコスト形成過程も不明確なままの事業者が多く存在し、本来的に需要依存型の業態意識から抜け出せないでいる例が少なくない。
静脈的な機能を果す諸産業は、巨大技術や資本をもつ企業群と工学的な技術をほとんど必要としない零小事業者たちとに分化している。